生成AIが開発現場に入り込んでから、「コードを書く」という行為の意味が大きく変わりつつあります。
PythonやJavaScript程度なら、要件を書けば数十秒でそれなりに動くものが出てくる。
最近では、ERPのような業務特化領域ですら、かなりのところまで生成できるようになってきました。
そんな状況の中で、ふと思いました。
「この時代に、あえて開発を外注したら、生産性はどう見えるのだろうか」
今回は、そんなちょっとした検証の話です。
今回外注したもの
作ってもらったのは、NetSuiteのSuiteletで動く簡素なフォームです。
ただし、実業務用ではありません。
あくまで画面説明や操作イメージ共有に使うためのモックです。
条件はこんな感じです
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データベースアクセスなし
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Suitelet内でデータを完結させる
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UIの挙動を説明できればOK
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要件は完全に確定済み
つまり、技術的にはかなり軽量な部類です。
正直に言うと、生成AIに頼めば秒速で完成するレベルです。
あえてエンジニアに依頼してみた
それでも今回は、あえて外部エンジニアに依頼しました。
結果はどうだったか。
1本あたり、だいたい半日。
体感としては、「まあそんなものかな」という印象でした。
驚くほど速くもないし、遅いとも言えない。
従来の感覚で見れば妥当なラインです。
そこで浮かんだ疑問
ここで、ひとつの疑問が頭をよぎります。
「本当にAIは使っていないのだろうか?」
もしAIを使っているなら、
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コード生成は短時間で終わる
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残り時間は別作業をしている可能性もある
という仮説も立てられます。
ただ、実際に成果物の説明を聞いたり、進め方を見たりしていると、
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試行錯誤している様子
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手を動かしながら調整している痕跡
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UIの細かい挙動を確認しているプロセス
こういった「人が考えながら作った空気感」は確かにありました。
発注側から見ると、AI利用は本質ではない
この検証で一番強く感じたのはここです。
発注側の立場からすると、
AIを使ったかどうかは、本質ではない
ということです。
重要なのはシンプルで、
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要求通りに動く
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期待した品質になっている
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説明できる状態で納品される
これだけです。
極端に言えば、
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AIで5分で作ったコードでも
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人が半日かけて書いたコードでも
納品物が同じなら、価値としては成立します。
ただし、受注側のスタンスは大きく分かれる
一方で、受注側から見ると話は変わります。
AI時代の開発スタンスには、すでに分岐が生まれているように感じます。
① AIを積極活用して効率を最大化するタイプ
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コード生成はAI主体
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人はレビューと調整に集中
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スピード重視
② 人間の理解プロセスを重視するタイプ
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生成結果を鵜呑みにしない
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実装を通して仕様理解を深める
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安定性・再利用性を重視
どちらが正しいかは、現時点では判断できません。
案件の性質によって、最適解は変わる気がしています。
SuiteScript × AI はまだ難しい領域
いままでの検証で個人的に再確認できたのはここです。
SuiteScriptは、AI生成の難易度がまだ高い。
Pythonなどの汎用言語と比較すると、
こういった要素があり、生成精度にばらつきが出やすい印象があります。
もちろん、完全に使えないわけではありません。
ただし、
「そのまま使える完成コード」
というより、
「叩き台として優秀」
という位置付けが、現時点では現実的だと感じています。
AIは“開発速度”だけを変えているわけではない
もうひとつ興味深いのは、AIが変えているのは単純な作業時間だけではない点です。
むしろ変わっているのは、
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開発プロセスの設計
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人間が考える範囲
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品質の担保方法
こういった部分です。
以前は、
「どうやって実装するか」
が主戦場でした。
今は、
「どこまでをAIに任せるか」
が設計課題になっています。
外注という選択の意味も変わり始めている
AIが普及すると、「外注は不要になる」という話もよく聞きます。
でも、今回の体験では逆の感覚もありました。
外注とは単なる「作業委託」ではなく、
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実装リスクの分散
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観点の外部化
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説明可能性の担保
こういった価値も含まれています。
AIがどれだけ進化しても、この部分は残り続ける気がします。
まだ正解はない
結論としては、非常に曖昧です。
AIを使うべきか。
人間中心で作るべきか。
外注するべきか。
内製するべきか。
どれも正解とは言えません。
ただ一つ確実に言えるのは、
「AIを使うかどうか」ではなく、
「AIと人間の役割をどう設計するか」
これが、開発現場の新しいテーマになっているということです。
しばらくは検証を続けたい
今回の外注は、小さな検証に過ぎません。
でも、こういう小さな実験を積み重ねることで、
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AIが本当に効く領域
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人がやるべき領域
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外注が活きるポイント
こういった境界線が、少しずつ見えてくる気がしています。
しばらくは、このテーマを追いかけてみようと思います。
というか、状況が状況だけに、追いかけざるを得ない、というのが、正直なところなのかもしれません。